ストレスケアブログ

コロナ疲れはこんな出方をする!心理師が出会ったコロナ自粛ストレス事例【成人編】(20.10)

コロナ疲れはこんな出方をする!心理師が出会ったコロナ自粛ストレス事例【成人編】(20.10)

そろそろ「コロナ疲れ」が顕在化する時

日本国内で「新型コロナウイルス」関連ニュースが毎日のように取りざたされるようになって、半年が過ぎました。

心理師の仕事も、今後永久に、感染対策と無縁ではいられないことでしょう。私のように対面で行うカウンセリングにこだわって臨床活動をしてきた人間も、価値観を広げなければならなくなりました。

様々な場面で「新しい生活様式」が波及してきたと実感するこの頃となりましたが、私は最近「私たちの心身の健康や精神生活に、どのような影響を与えることになるのか?」ということに注視しながら臨床活動に従事しています。

「コロナストレス」と「放射能ストレス」は似ている

心理学的には、一般的に、私たちは新しい習慣を定着させるのに約21日-つまり3週間かかると言われています。…「三日坊主」どころか、約一か月は決め込まないと、人は「変化した」とはとらえられないわけでして…。

しかし、臨床的な感触で申しますと、今回の新型コロナウイルスのような、じわじわとボディブローのように私たちの生活にピタッと張り付いて無視して生きていくことがほぼ許されない(気持ちにさせられる)類のストレスというのは、目に見えて「ストレスの影響が出てきたな」と感じられるまでに、大体早くて3か月~半年くらいかかります。

新型コロナウイルスの流行と、日本の歴史史上初めての?!全国的なウイルスによる自粛生活の推奨という環境が人に与えるストレス…確かに体感し始めたときに、にわかにデジャヴュ(既視感)を覚えた私です。

「新型コロナ禍と放射能ストレスって、似てるよね。」先日、3.11後福島で仕事をご一緒させていただいた仲間の方々とも、この話題になりました。

「コロナストレス」と「放射能ストレス」は、ココが共通している

・目に見えない
・空気中にいる
・ほとんどの場合は死なないにしても取り込めば不調や苦痛をもたらすことがわかっているがその出方に個人差がある
・ずっとメディアで取り上げられていて逆に関連情報を得たくなくても耳に入ってきてしまう
・どのくらい自分がそれと接触したか、リアルタイムでわからない
・他者との密な交流を避けようという気持ちが働く
・影響を受けないためには身体を洗浄しておくことが求められる

コロナストレス―本当に怖いのは「うつ」ではない

このように、「コロナストレス」にも「放射能ストレス」にも、人の不安感を高める共通した要素がたくさん詰まっているのです。

「コロナウイルス」がいよいよ我々の心身にどのような影響を与えようとしているのか。具体的にイメージしたければ、3.11以降「放射能ストレス」に晒された福島の人たちのこれまで9年間の様子が大いに参考になるはず。

そこで皆さんにご覧いただきたいのが、上の表です↑↑

これは、5000人のメンタル不調を抱える人を対象として、社会学者のトーマス・ホームズと内科医のリチャード・レイによって作成されたものです。ストレス研究の領域ではとても有名な研究です。

ストレスは、生活上の「悪い出来事」だけではなくて、「良い出来事」に対しても感じるのが特徴で、「結婚」という人生のイベントを基準値(50点)として、ストレスの強度が比較されています。日常の生活で起こる様々な変化を「ライフイベント」として、各イベントがどれだけ重いストレスなのかを点数化したもの。20位までを抜粋掲載しました。

過去1年の生活で、この表に当てはまるストレス項目の合計値が 300点を超している人の80%が、翌年以降に健康を崩し、200~300点のストレス負荷でも、5割の人が健康に何らかの問題が生じると報告されています。

さて、この表の中に、赤字で表記した項目と、青字で表記した項目を見比べてみましょう。

赤字は全てコロナウイルス感染に直結したストレス項目のようですが、実は赤より青の項目の方が多いですよね。

つまり、直接コロナに感染するといった体験をする(赤字)よりも、ストレスがかかったことによる反応として日々良くない生活習慣を続けること(青字)の方が、結果として体調を崩していく事に繋がることが多くあるんだということが分かる結果なのです。

コロナ自粛ストレスが我々の心身に直接的に悪影響を与える例

ではここで、まず差しあたり、コロナ自粛生活からくるストレスによって、上記のような得点の高いストレス項目に当てはまってくるケースにはどんなものがあるか整理してみましょう。

①依存症の増加

3.11の後、1年位して、福島県内の精神科外来はアルコール、ニコチン(タバコ)、ギャンブルなど各種依存症の相談で溢れかえっていました。こうした依存対象を複数抱える方も少なくありません。

そして発生後2年後くらいからでしょうか、、今度は、こうした依存症を抱えながらの生活のツケで身体に病を抱えるようになった患者さん達が循環器系の領域にどっと増えたと医療現場野方からよく聞きました。

また、外出にはリスクが伴うということで、どうしても家庭内でゲーム、SNS等のメディア漬けの時間を過ごす方たちも。。特にコロナ自粛生活では、ゲーム依存に陥る人が急増しています。

メディアに依存した生活を送ることによる心身への悪影響は、今年8月くらいからはっきりと乳幼児にも出始めていると感じています。このことについて詳細はブログ「コロナ疲れはこんな出方をする!心理師が出会ったコロナ自粛ストレス事例【乳幼児編】」にて述べることにします。


②精神疾患の発症、あるいは悪化

3.11の発生後1年~3年くらいまでは、どれだけ気をつけても放射能が落ちきらない気がして身体を洗浄する事を止たられない悩みや、もう放射能の影響が出て何かの病気にかかってしまっているに違いないという不安から病院を次々ハシゴしてしまうというような悩みなど(前者は精神科を受診すると「強迫神経症」、後者は「心気症」と診断されます)が多く寄せられ、子どもにおいては、チック、つば吐きなどの精神的緊張からくる症状が多く見られたことに驚かされました。

支援者の中には、熱心で思いやりのある人ほど、尽くしすぎてもの凄いエネルギーを捧げてしまい(支援者ハイ)、燃え尽きてしまう(支援者バーンアウト)、結果、うつ状態に陥る方がおられました。

あと少し負荷が加われば心が持ちこたえられなくなる状態に元々あった方の中は、放射能がもたらした不安感と生活の予期せぬ変化によって一気に心のコップの水があふれだし、強い恐怖、過敏、不信感に苛まれる精神状態(精神科を受診すると「統合失調症」と診断されます)に陥る方も多くおられました。

コロナ自粛ストレスが間接的に我々の心身に影響をもたらす例

さて、一方で、先ほどの表でもう一つ注目すべきなのは、実は青字にて表記した部分で。

先述したように、直接的に身体に悪影響が出た場合よりも遙かに多くのストレス項目の方が、感染していない多くの人たちに当てはまってくる。

ここが、この類いのストレスの本当に怖いところなんだと思うのです。

そしてもう一つとても怖いのは、赤字で示したストレス項目に比べて、この青字のストレス項目は相互に連関し合っているという点。つまり、青字で示したストレス項目をどれか一つでも体験している人は、殆どの場合、複数のストレス項目をドミノ倒し的に体験して行くことになる、という事なのです。

では具体的に、これらのストレス項目には相互にどのような関連性があるのか、見てみましょう。

①ストレスによる暴力的人間関係の増加

自ら取る休みならば気持ちが上がりますが、休めと言われて取る休みはあまり楽しめない。増して、これだけ長い間「なるべく休んで、なるべく外出しないで」というプレッシャーがかけられると、ボディーブローのようにメンタルが弱まる方が普通です。

あらゆる意味で余裕を失い、機能を喪失するなどして劣悪化した職場環境が、人間関係をも疑心暗鬼なものにし、ハラスメントを生み出しています。無理がきく人材が無理を背負い込んで経済的にも肉体的にもギリギリまで追い込まれることになります。

仕事をこれまでのようにできない。仕事を失う。仕事を得たくても得られない。職場での人間関係の悪化。これらのストレスが、家庭に持ち込まれ、3.11の後も、家庭においてはDV(家庭内暴力)や虐待が急増しました。

意外なようですが、以前から長期引きこもり生活にいる方たちからは、「いつもの生活と変わらないのでストレスは別に変わりません」という声も聴かれます。

また、コロナも放射能も、共に子どもを望んで不妊治療をしていたカップルにとっては、大変大きな壁となっています。治療を続けていくこと自体が不可能、あるいは、感染や汚染の不安と隣り合わせな作業になってしまう。金銭的な負担も、想定以上のものとなってしまう。


②全体的な少子化と「望まれない子」の増加

コロナストレスが家庭に持ち込まれ、DVや虐待に発展していくと、さらなる悲劇の連鎖が生じる事になります。

まず、子育て世帯においては、ずっと家族員が一つ屋根の下に居続けなければならないというストレス。これが、適度な距離感で保たれていたはずの家族の人間関係を変化させ、互いに相手のこれまで感じなかった欠点が鼻につき始める。

家庭内において保護者のストレスが子どもに向かってしまって虐待が起きてしまうと、子どもの心には長きに渡って適切な治療を受けない限り一生脳に残る傷がついてしまう事が最新の脳科学の知見で明らかになっています。

心理的な外傷体験は、きちんとケアされない限り、何年経ってもその方に生きづらさをもたらし続け、外傷を受けたストレスが、精神的・知的・身体的発達を遅らせていきます。このことについては、ブログ「コロナ疲れはこんな出方をする!心理師が出会ったコロナ自粛ストレス事例【乳幼児編】」にて、掘り下げていきます。

結果として、”コロナで生き残ったけれどココロが死んだ”という人が量産されることになってしまう。これについては、大変大きな危機感を感じさせられているところです。

その一方で、ストレスが性暴力や夫婦間における性交渉の強要などの方向性に波及して、望まない妊娠が増えていることも事実です。具体的な統計は出ていませんが、現場の感触としては明らかに、望まれてまれて生まれる子どもが減り、望まれないで生まれる子どもが増えていく、という事が生じているのです。

コロナストレスをうまくマネジメントして生きよう

人は、自分で自分の人生の舵取りができている、自分の意思決定によって人生を歩んでいるという「自己コントロール感」を削がれると、非常に大きなストレスを感じることがわかっています。

ですから、現在のコロナ禍にて不必要にメンタルが蝕まれないように生きるために最も避けて欲しいのは、常に漠然とした感染不安に苛まれているという時間が無いように生活すること。

今こそ、自分でできるストレスリダクションメソッド(ストレス軽減法)を習得する時

気を付けるべきことをはっきりさせて、「やれることはやってるから大丈夫!」と心から思って生活すること。その姿勢が、しいては自己コントロール感をあげることに繋がります。
闇雲に感染しない為にはどうすれば良いのか調べてしまうと、どんどん不安が高じてきて逆効果なのです。

当オフィスでは、オンラインでもストレスケアの為のワークをお伝えすることができます。今こそ、具体的ですぐに実行でき、即効性を感じられるストレスリダクションメソッド(ストレス軽減法)を学ぶなどしていただき、自分のストレスを上手くやりくり(マネジメント)していきたいものですね。

ウイルス対策でストレスを溜めないで

最後に、具体的且つ実行可能で、信頼できる情報をみつけましたので、その一部を転載しておきます。

-------------------------------------------------

「京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は、ウイルス学の専門家として、動物のコロナウイルスを参考に、ウイルスとの接触を「100分の1」にしていくことを提唱している。

(中略)

 「このウイルスの感染拡大からいくら逃げ回っていたとしても、人口の6割くらいが感染しないと終わらない。その中で“接触8割減”を1年やれと言われても無理だと思う。完璧を目指したとしても感染する人は感染するし、完璧を目指せば目指すほど経済が動かなくなってしまう。それなら諦めて、外に出たとしても逃れてやろう、いつかは感染するけれども、医療崩壊させないように感染するのを遅らせよう、ということだ。“100分の1に減らせ”と言っているのもそういうことで、“100万個のうちの1個”にしなければならないのではなく、“100万個のうち1万個以下”でいい。今回のウイルスは長生きするという報告もあるし、最後の1個を殺すまでには時間がかかるが、全てが生きているというわけではない。くしゃみの飛沫がかかった部分を触ったとしても、手に10万個が付けば多い方だろうし、そのうちの1万個を防げばいい。つまり、“どこかにウイルスはいるはずだ”と常に考え、触った手から目や口、鼻、呼気から入るものが100分の1になるようにするということだ」。

 では、私たちがウイルスとの接触を“100分の1”するためには、どのような方策が考えられるのだろうか。

 「飛沫をそのまま浴びないという意味では、スーパーやコンビニの透明のシートでもかなりブロックされると思うし、空気が流れていたり、広い場所であれば、それほど気にする必要はない。手袋についても、ちゃんと処理すれば良い。また、例えばトイレに行った後に手を洗ったとしても、ドアノブを触ってしまえば無駄になってしまうので、本当は常に洗わなければならない。ただ、現実には不可能だ。アルコールスプレーも逼迫している状況なので、代替案としてウェットティッシュ、濡れタオル、濡れ手ぬぐいなどを3つ用意し、順番に使うなどして欲しい。食器洗いのキッチンハイターは効くが、手が荒れてしまうので、中性洗剤を混ぜるのもいい。次亜塩素酸水も効くようだが、“空間除菌”は期待しない方がいい。そういう少しの知識があれば感染を抑えていけるのではないかと思うし、8割の人が行動できれば大丈夫だ、というのが私の主張だ」

(ABEMA/『ABEMAPrime』4月21日15時配信)
----------------------------------------------------

本投稿は、旧オフィスサイトのブログにおいて2020年5月2日に公開された内容を加筆修正したものです。本投稿内容の無断転載・無断引用を固く禁じます。